Seth Network Japan
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 フランソワは背の高い黒人でカリスマ的な人物だった。響き渡るような声は自信に満ちていた。不確かなところなど一切ない言葉の使い方で、彼は自分がいくつものレベルにわたる現実界をマスターし、世に隠れた知識や秘密に通じていることをみんなに知らしめた。そうした知識は、それを授かる用意のできていない者たちに伝えるべきではないと彼は強調した。さもなければ、知った当人にとって危険極まりないことになりかねないとのことだった。

 フランソワはもっぱら若者たちを惹きつけたが、今、振り返ってみても、正直、彼は「達人」だったと言える。(もっとも、それは)他人の中に息づく怖れや不安定なところを利用する達人だ。誰かが失望感を抱いている、そのうえ、自分には価値などほとんどないと思っている、ときたら、もう、まな板の上に載っているようなもので、フランソワは好きなように料理することができた。彼の狙いは一つの宗派を創設し、形而上学の指導者からなる「精鋭軍団」を作ることにあった。そうした指導者たちが無知な民衆のもとに下っていき、哀れな魂が救われるよう助けてやるという仕組みだ。もっとも、フランソワに就いて学んでいれば誰でもその軍団に入れてもらえるというわけではない。選ばれなかった者たちは、引き続き、教えを受けられるが、フランソワが形成しつつあった内部集団の外にいることになるのだった。誰が選ばれるかという噂が流れ始めた、ある日のこと、僕は、自分が、特権を与えられた、その若干名の一人になることはないであろうことを耳にした。

 6年生(日本の小学6年または中学1年に相当)になる前、クラス分けの方法が新しくなるという発表があった。平均以上の知能レベルがある者たちのために“SP”と呼ばれる特別なクラスが作られるという。そのふるい分けの基準を決めるテストが実施されることはなく、説明もなかった。両親はただ、子供がそのクラスに入れたかどうかという通知をもらうだけだった。みんな、その通知がいつ届くかとそわそわしていた。(そして、ある日)自分はそのクラスに入れてもらえなかったと両親から聞かされた時、どんなにつらかったか、今でも憶えている。その2週間後、結局、そのクラスに入れてもらえることになったという通知が届いたものの、大して気分は晴れなかった。そんな子供のころでも、目に見える以上のもの(背景)があることはわかっていた。おそらく、クラスが定員に満たなかったからだろうということは読めた。そんな理由で、僕の知能が新たに、まるで奇跡のように浮上したことになったのだろう。