Seth Network Japan
Seth Network Japan

 学校代表チームのメンバーを決める選考試合や演劇祭のオーディションなどに参加して勝ち残れなかったり、特別なイベントに選ばれなかったりすると、なかなか、それを受け入れられないことがあるものだ。しかし、フランソワの宗派に自分の居場所はないと言われたことは、とても耐えきれるものではなかった。少なくとも、その理由を知る必要があった。そこで、勇気を振り絞って、フランソワに電話することに決めた。噂が本当かどうか確かめてみるのだ。

 電話回線のあちら側からやってくる彼の声は僕自身の脳の中から聞こえてくるようだった。彼は穏やかに、そして、堂々と話を進めた。僕は彼の宗派に入れてはもらえないという。理由は次のようなものだった。

 僕が悪魔的なものに支配されているというのだ。これは確かに SP クラス(前ページを参照)に入る資格がないと言われるのよりも、はるかに応(こた)えた。フランソワは、僕が自分自身について一番怖れていたことの数々を告げた。僕は本当に何か根本的におかしいらしいこと。なんだか、人格構成に問題があるらしいこと。そして、自分自身の手綱をきつく引いておいた方がいいこと。さもないと、ありとあらゆる災厄が解き放たれ、どれだけの被害が出ることになるかわからないからとのことだった。これだけ歳月が過ぎた今、振り返ってみても、19 歳だった当時の自分が気の毒に思える。そのころの僕はフランソワの宣告を真実として自ら本気で受け入れようとしていたのだ。ともあれ、悪魔的なものがあろうがなかろうが、人生は進んでいくわけで、フランソワは(僕が彼の宗派に入れないので)代わりになるものを僕にあてがってやろうとしていた。

 彼は、僕が宗派組織の外で彼の哲学を勉強し続けることができると告げた。特定の本を彼の言う順序で読み進んでいけば、ある程度は悟りを見いだせるだろうとのことだった。まあ、「ある程度の悟り」なら、闇の中をさまよい続けるよりは、ずっとよさそうだ。そこで僕は、自分の眼前にフランソワが用意してくれた道を進んでみることに決めた。そして、それから 1970 年代後半になると風向きが変わり始めたのだった。

 フランソワの宗派に選ばれた女の子たちの一人が、たまたま、ジェーン・ロバーツの「セス資料The Seth Material」という本を知った。その本はフランソワの「必須書籍リスト」には入ってなかったのだが、彼女は夢中になり、仲間の弟子たちにその話をし始めた。僕たちが歴史から学ぶものがあるとしたら、それは、地球上で最もパワフルな影響力があるものの一つは、口から出た言葉(クチコミ)だということだ。そんなわけで、その話は瞬く間に広まり、遠からず、フランソワは、この作品を必読リストに加えられないものかと、うやうやしく尋ねられることになった。