この休憩時間中、クラスのメンバーは、夢、偶然、幽体(体外)離脱体験など、今日であれば「ニューエイジ」に分類されるであろう話題で盛り上がった。休憩が終わってジェーンが再び部屋に入ってきても、まだ、ざわついた雰囲気だ。数々の議論が繰り広げられ、笑い声が聞こえ、(みんなが)仲間である感じがした。互いに初めて知り合った連中が何人もいるのに。…いや、(本当に)初めてだったのだろうか?
フレッドは感じのいい青年で、その晩のクラスに参加している彼は、親しげでもあり、賢そうでもあった。だから、クラスの参加者の一人が誰にともなく大きな声でこう尋ねた時はいささか驚いた。
「なんでフレッドは尋問されて(問い詰められて)るんだ?」
そして、同じ質問がもう一度放たれたが、(今度は)“誰にともなく”ではなく、誰あろう、この僕に対してだった。続いて、尋ねられたのは、なぜ僕がフレッドに対してそこまで怒りを感じているのかということだ。
僕はどぎまぎし始めた。反射的にそれを否定しようと思ったのだが、実際、フレッドが口を開くたびに(自分の中で)彼に対する怒りが増してきていたのだ。しかし、その時にはジェーンが再びトランス状態に入っていて、すぐに“スマリ語”で歌を歌い始めた。そして、トランス状態のまま、僕とフレッドに手振りで合図した。立ち上がって、こちらに来いと。
僕たちは立ち上がり、ジェーンのすわっているロッキングチェアの両脇に立った。トランス状態で腰掛けたまま、ジェーンは両手を伸ばすと、フレッドの両手をとり、僕の両手をとり、僕たち二人の手が握り合うように重ねた。僕たちに手をつながせたまま、ジェーンがスマリ語で歌い続けると、フレッドに対する怒りが薄れ始めるのがわかった。そこで、「OK。君に対する怒りはなくなったよ」とでも言うように、僕は彼に微笑みかけた。ただ、腹の中では(あるいは自分で「腹の中」だと思っていただけかもしれないが)まだ、その怒りへの固執が残っている。ジェーンはスマリ語で歌い続けながら、フレッドと僕がまだ握り合ったままでいる両手を揺さぶった。その動きで、フレッドに対する僕の怒りは本当に消えた。フレッドと僕は笑い、手をほどき、ジェーンは歌を終えた。
すると、瞬きする間もないくらい、すぐにセスが出てきて、僕を見つめながら言った。
「いい教訓になったと思いなさい」
彼(セス)は、さもしい意味合いで言ったわけではないし、僕自身、けなされたとか、自分の品位を落とされたなどとは全く感じなかった。