Seth Network Japan
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 ジョーンは神経質そうに貧乏ゆすりをしていました。気の利いた返答はありません。そのころ、彼女はある男性とつきあっていたのですが、それはお酒を飲んでばかりいる人でした。彼女は言ったものです。「あの人があんなに飲むからわたしは神経過敏になって怒るの。わたしの問題は彼。彼のせいでイライラするの」

口述するロバーツと速記で書き留めるバッツ
口述するロバーツと速記で書き留めるバッツ。­「Seth Speaks」­(Ban­tam Books 社版)より

 ロブは笑いました。というのも、彼女があまりに、自分は彼の犠牲者であって、自分はどこも悪くないという口ぶりだったからです。

 セスは言いました。「他にも理解しなくてはいけないことがある。テレパシーは絶えず働いている。一人の人間に特定の行動をずっと期待し続けると、それはその人間に対して、そうするようにとテレパシーで絶え間なく暗示を送っていることになる。個人個人は誰でも暗示に対して反応する。その時々に特有な条件に従って、こうした個人は程度の差こそあれ、感知する総体的な暗示に沿った行動をとる。

 こうした総体的な暗示とは、言葉やテレパシーによって他の人々から与えられたものだけを含むわけではない。起きている間や夢を見ている間に本人が自分自身に与えたものも含まれる。ある人が精神的に落ち込んだ状態にある場合、それは、その人がすでに自らの、または他の人々の否定的な暗示の犠牲になったことを意味する。さて、君がそんな彼を目の当たりにして、彼がみじめに見えたとしたら ── ジョーンを鋭く見つめながら ── あるいは、どうしようもない飲んだくれだと思ったら、君がそれを一言も口にしなくても、彼は潜在意識のレベルでその暗示を捉える。そして、ただでさえ弱っているその状態で、彼はそれを受け入れ、それに基づいて行動をとることになる。

 これに対して、同じ状況でも君がもし、それを止(や)め、自分に向かってやさしくこう言ったとしよう。『今から彼はだんだん楽になる』あるいは『彼が飲んでいるのは一時的なこと。これでも本当に望みはある』。すると、君は彼を助けたことになる。それは、その暗示が、落ち込んだ状態と懸命に戦っている彼がその状態を撃退できるよう、テレパシーで彼に小さな弾薬を与えたことになるからだ。

 自分の希望に合わせて状況を作り上げていったり、自分自身や他人の否定的な暗示から自らを護(まも)ったりする方法は明らかにいくつもある。君は否定的な想念やイメージを消すことを覚えなくてはいけない。それは、それらを正反対のもので置き換えることだ。

「セス資料」第 13 章「健康」より


ご覧のように、セスの本は「怪しい」ものではなく、むしろ、堅めの解説本という感じでしょう。セスの話は、日常生活や対人関係から歴史、医学、心理学、物理学等々、広い範囲にわたりますが、この「堅めの解説本」であるという特徴が、ベストセラーとなった要因のひとつであり、同時に、万人受けするものではない要因でもあると考えられます。次章では、セスの本が誕生した背景と経緯をご紹介しましょう。