Seth Network Japan
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第3章 バッツ夫妻への助言

 「セスは語る」は第 511 回のセッションから始まりますが、それ以前のセッションは「初期セッション集」(The Early Sessions)というタイトルで9冊の本に分けて 1997 年から順次、出版されました。このシリーズに収められたセッションは当初、公開する予定のなかったもので、バッツ夫妻自身や夫妻の友人知人等に対するアドバイスや解説がよく出てきます。元々、プライベートな話であったものですが、一般の人にとっても役立つ話が多いので、バッツ夫妻に関する話を少しだけご紹介しましょう。

セス関連書籍をお読みになった方は既にご存知のことですが、セスはロバーツを「ルバート」、夫バッツを「ジョーゼフ」と呼び、共に男性であるものとして話をします。カッコ内は読み仮名を除いて原作のとおりで、通常はロバーツの語る言葉を書き留めた夫バッツの注釈です。


ロバーツと喫煙

セッション 32

1964 年 3 月 4 日(水)(セスに)指示された時刻、午後 9 時

 (8 時 40 分。ジェーンは煙草を一箱買いに近所の食料雑貨店に出かけた。数ブロック離れたところなので、実際のところ、彼女は急がなくてはいけなかった。雨も降っていた。ジェーンは、またもや煙草を止(や)めようとしていたのだが、今回の奮闘は1日経つか経たないうちにさっき、夕食の後、泣きながら終わりとなった。一種のパニック的な反応のようで、前にも起こったことだった。

 8 時 55 分、ジェーンが店から戻った。今夜のセッションがどんなものになるかわからないと彼女は言ったが、8 時 58 分には「彼を感じる」と伝えた。実際にセッションが始まったのは 9 時 2 分で、ウィジャ・ボードは使わなかった)

ロバーツ26歳のころ
ロバーツ 26 歳のころ
The Way Toward HealthAmber-Allen Publishing 社版)より

 こんばんは。
 まず、もちろん、少しコメントがある。それは、ルバートの喫煙習慣と彼の現在のパーソナリティーを結びつけるだけでなく、ある程度、彼の現在と過去のパーソナリティー達を結びつける話だ(セスの使う「パーソナリティー」という言葉は「人格」や「性格」というよりは個々の「存在」、「人物」自体を指すことが多い。例えば、前世のパーソナリティーと現世のパーソナリティーが情報を交換し合う話なども出てくる)

 彼の自己統率力は向上しているし、この人生においても、特に思春期を過ぎた頃から向上した。彼が煙草に耽(ふけ)るのは、ジョーゼフ君、君が煙草を吸うようになっていったのとは全く別の理由によるものだ。彼にとって、その習慣を断ち切るのは難しいことだが、彼は断ち切ろうとしているし、去年一年の間には大きな前進があった。大事な前進だ。

 彼が煙草を吸うのは、過去世で彼につきまとっていた、特徴的な貪欲(どんよく)さの名残(なごり)を表している。今回の人生では煙草、それもお名残程度というわけだが、過去における貪欲性は遙かに多くの分野に亘(わた)るものだった。食べ物でも飲み物でも目一杯、腹に詰め込もうとする強い欲求をはじめとした、あらゆることにおける欲の深さ、がめつさだ。それは知的、感情的な面においてさえも当てはまるものだったが、彼はそれを大方、克服した。

 今回の人生では、特に成人してから、彼は煙草以外のものに対する欲は全て放っておいて、煙草だけで済ませることができるようになった。もっとも、ここには酸欠恐怖症とでも呼べる要素もある。しきりに空気を吸い込もうとする行為だが、神経質に煙草をふかすことで気が済む場合もある。さらに、閉所恐怖症も、根底にある一つの要素だ。空気が足りないとか、自分が閉じ込められてしまっているなどと感じることだ。

 また、ルバートには、脂濃(あぶらっこ)い食べ物を貪(むさぼ)りたいという潜在的な欲求もあるのだが、彼はその欲求も乗り越えた。喫煙の習慣は、こうした昔からの性癖に基づいた欲求を満足させているわけだが、何はともあれ、彼はその喫煙も卒業できることだろう。彼は(広い意味で)大食漢だというだけのことだ。観念や感情の大食漢であり、自分の周囲に対する欲求を抱えた大食漢だ。いろいろな意味で、吸い取れるものは何でも吸い取ってしまう、真のスポンジのようなものだ。しかし、彼は克己心を身につけた。また、物事をある程度、辛抱するということも彼は苦手なのだが、それも学んでいる最中だ。

 また、ここで彼の現在の人格だけに関係しているものに「煙草を吸う作家」という自我のイメージがある。この場合、煙草は独立を表し、さらに、個性であるとか、女性解放(時代背景を考慮)さえも象徴している。というわけで、全ては、言ってみれば、迷路のような網の中で互いに結びついている。ルバートがこれを理解した時、彼にとって状況が楽になればと思う。

 すでに話したように、これは、いくら吸い込んでも足りないかのように、彼が空気をがむしゃらに吸い込もうとすることと関係がある。彼は一度(過去世において)、子供の頃、窒息死したことがあるのだが、それも今現在のここに繋がっている。取り乱したように空気を吸い込むのは潜在意識の記憶の働きということだ。本当に、この話が彼の役に立てばと願っている。

「初期セッション集1」(セッション 32 1964 年 3 月 4 日)より