そして、1963 年 12 月 8 日、わたしたちは、うまくいくものかどうか訝（いぶか）りながらも、再びボードに向かいました。窓の外は雪が降っていたものの、部屋の中は暖かく、気持ちのいい晩でした。そこで突然、わたしたちがほとんどついていけないくらいの速さで指示盤が動き始めたのです。

　ロブが質問をし、指示盤がつづりだした回答を彼が書き留める間は休止しました。それまでフランク・ウィザースは一語か二語ほどの簡単な返事をしていたのですが、今回は答えが長くなり、その性格も変わったようでした。部屋の空気もどこか違っていました。

　「僕たちにメッセージはありますか？」とロブが聞きました。すると、指示盤は

　「意識とは花びらがいくつもある花のようなものである」

と答えたのです。フランク・ウィザースは、このすぐあとのメッセージから、転生が確固とした事実であると主張しました。そこでロブが尋ねました。

　「あなたが転生した、さまざまな人生についてどう思いますか？」

　「それらは私自身だ。しかし、私はそれ以上になる。全体とは、その心の総計だ」

　指示盤が完全な文章になっている答えをつづり出したのは、これが初めてでした。わたしは笑ってしまいました。ロブが尋ねました。

　「これは全部、ジェーンの潜在意識が話しているのかな？」

　「潜在意識とは一つの『回廊』だ。どの扉を通って旅をするかによってどんな違いが生まれよう？」

　わたしはロブに

　「これはきっとあなたの潜在意識なんでしょう」

と言ったのですが、彼はその時、すでに次の質問をしていました。

　「フランク・ウィザース、将来、何か特定の質問があった時には尋ねてもいいかな？」

　「ああ。ただ、『フランク・ウィザース』とは呼ばないで欲しい。あれは、あまり特色のない存在だった」

　ロブとわたしは目を見合わせて肩をすくめました。もう何が起こったのかわかりません。指示盤の動きはどんどん速くなっていきました。少し待って、ロブが尋ねました。

　「どう呼んで欲しい？」

　「神にとっては、どんな名前で呼んだとしても、それは彼の名前になる」という答えがつづり出されました。

　ウィザースさんは、ここに至って宗教的になってしまったのです。わたしは目をぐるっと回し、窓の外を見つめるふりをしました。ロブが言いました。

　「でも、僕たちが話しかけるのに何か名前が必要なんだけど」

　「君達が私をどう呼んでも構わないが、私は自分のことを『セス』と呼ぶ。その名前は私の中の私自身とでも言えるものに一番合う。」

「セス資料」第１章 より

　これでセスとの「双方向通信」ができるようになりました。

　ウィジャ・ボードを使った実験もセスの口述も、専ら、夜９時ごろに始められることが多かったようです。バッツ夫妻は一晩の質疑応答や口述を１つの「セッション」（１回の「口述会」、「記録会」）として、セッション単位で記録をまとめていきました。

　現在、一般的な記録では、上述のフランク・ウィザース（実名「フランク・ワッツ」）という名前が初めて登場したセッション（1963 年 12 月 2 日）が第１回とされており、上記のように「セス」がデビュー（？）したのは 12 月 8 日、第４回のセッションということになります。その後、第７回（12 月 13 日）で、ロバーツは指示盤のつづり出す答えが先にわかってしまうようになり、続く第８回（12 月 15 日）ではセスの回答を声に出してみるようになります。これは、ダイアルアップ接続から光通信にアップグレードしたようなものです（？）。そして、年が明けるとウィジャ・ボードを使う比率はごくわずかになり、セッションを行うのも概（おおむ）ね毎週月曜と水曜の夜というパターンに落ち着いていきます。