Seth Network Japan
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チャネルされたフィクション - 1

オーバーソウル「セブン」の修行
第11章「語り手の国に来たマーアー」より

マサ 訳

 マーアーはそれまでモザイクというものを見たことがなかった。彼女は中庭の壮観な床面に目を奪われた。午後の日差しの中できらめきを放つ、青、緑、紫の鮮やかなタイルに呆然と見入った。おびただしい数の模様で目もくらむほどだ。くねくねと曲がった奇妙な線、風変わりな図形、円、四角形など、すべてが互いに融け込んでいた。

 ちらちらと青く光る、魚の形をした平らな石が、緑色に輝く鳥形の石に、はめ込まれている箇所がある。ただ、その境目がほとんどわからないので、マーアーの目には、まるで魚が鳥に姿を変えたかのように見えた。他の模様もすべてそうだ。そうしたさまざまな像があまりにも融けあって、きらきらしているので、その上を歩いていっていいものか、彼女はためらった。スンプターは先を歩いていたが、足もとなどまったく見ていない。そこで彼女も素直にそれに従った。中庭を囲んで垂直にそびえ立つ岩壁がタイルの上に長い影をくっきりと落としていた。

 彼女が追いつくのを待ちながら、スンプターが言った。

 「スムトア」

 彼女はだんだんと彼に慣れてきていた。ランパと離ればなれになって、この2日間、彼はずっと彼女に付き添っている。彼がまた言った。

 「スムトア」

 言葉自体の意味は見当もつかなかったが、彼の身振りを見れば、言っていることは明らかだった。すぐ近くの岩壁を指さしている。目をやろうと振り返ったマーアーは、ぎょっとして跳びのいた。一人の男の姿があまりにも見事に刻みつけられているので、彼女は一瞬、それが本物だと思ったのだ。その腕は彼女自身の腕に触れるくらい近いところにあった。スンプターと同じく、その男もかなり大柄で、すみれ色の装束をまとっている。彼女がこの地で見かけたすべての人々と同じように、肌の色はかなり明るい茶色で、目は青く、虹彩にオレンジ色の斑点があった。

 「スム・ト・ア」

 スンプターが今度は、ゆっくりめに言った。

 マーアーは首を振り、自分の言語で言った。

 「わたしにはわからない」

 彼は、もう一度、指さした。彼女は、また振り返って岩壁に目をやった。壁面全体に、いくつもの肖像画や線画が描かれていた。今までどうして気がつかなかったのか、彼女は不思議に思った。それらはきわめて巧妙に制作されていて、本物の人間が岩の間に融け込んでいたり、岩の割れ目から現れたりしているように見えた。

 「クロム・ア・タウム」

 スンプターが微笑んで言った。