マーアーは(こうして)自分に教えてくれているときのスンプターがいちばん好きだった。教師としての彼なら受け入れられるし、怖いと感じることもなかった。ここで彼女は首を横に振って笑いながら彼に言い返した。
「でも、あんたは『スンプター』。それって名前だよ」
「それは君が尋ねたあの時点でわたしが自分の名前として返答したものだ」と彼は言った。真顔(まがお)だった。
「じゃあ、あんたの名前じゃないってこと?」彼女はあきれかえっていた。
(スンプター)「ときにはわたしの名前になるが、わたしはほかにもいくつもの名前を使う…」
(マーアー)「(いつも)同じ名前を使わなかったら、みんなはどうやってあんただってわかるの?」
(スンプター)「顔を見ればわかることだ。友人たちもその時々によってわたしを違う名前で呼ぶし、わたしも自分を好きなように呼ぶ…」
マーアーはスンプターの話し方にどこか妙な温かさがあるのが気に入らなかった。その口調には冷めているところもあったし、なんだか怖い気もするのにだんだん惹きつけられていく感じがした。
「(じゃあ)あんたを『スンプター』って呼ぶよ」と彼女は言った。ほとんど怒っているような言い方だった。
「それは君が自分に都合のいいようにわたしの性質を限定しようとするからだ」と彼は応えたが、その声に敵意はなかった。
(彼は続けた)「君はわたしを捉える自分の知覚も制限しようとしている。でも、わたしは今この時、君を二つの名前で呼ぼう。『ソラナ』と『マルンダ』だ。この名前、この言葉は今、対立しているように見える君の二つの部分(パート)を示している」
「あたしはマーアー」と彼女は苛立(いらだ)って言うと、急に立ち上がり、(その場を去ろうとして)ためらった。スンプターは彼女を追うような素振りを見せなかった。彼女は思わず尋ねた。
「いったい、どんな二つの部分(アスペクト)?」
彼は答えた。「(自分の)思いどおりにしたいという欲求と(すっかり)身をまかせたいという欲求だ」
マーアーは、自分の太ももは温かく、頭は冷たい感じがした。彼の言ったことはあまりにもいろいろな意味で的を射ていたので、ただ立ったまま、彼を見下ろしているしかなかった。