「知られざる」現実界 第1巻
セッション 688
マサ 訳
私は(このセッションの午後 10 時 26 分以降で)君達が今、現在の表層しか認識しないと言ったが、(生物学的な)種の発達する経路も君達は一通りしか認識していない。しかし、他の蓋然的な現実界は(実際のところ)同時に存在しており、君達のシステム(物理的な体系全体)の中にさえも、そうした他の現実界を示すヒントはある。イルカがちょうどいい例だ。君達の蓋然性の路線から眺めれば、イルカ達は風変わりな動物だが、現在でも君達はすでにイルカが優秀な頭脳の持ち主であることは認めている。また、イルカ達が互いにコミュニケーションを取る、その幅の広さも、ぼんやりとではあるものの、君達の目に留まることがある。
時間に対する君達の見方に合わせて言えば、かつて、君達の地球上には、こうした種が数多く存在した。彼等は水中に棲息し、君達と同等、そして、それ以上の頭脳を備えていた。例えば、君達の間で語り継がれている人魚の伝説は、かなり空想的に脚色されてこそいるが、実際、こうした種の発達形態の一つを示唆している。イルカより小型の種がいくつかあったが、身体の作りは概して同じだった。彼等の知能は異論を挟む余地のないもので、海の神々にまつわる古い神話は、こうした数々の種に由来している。今でも(人間の世界に対して)イルカ達の側には極めて感情豊かな生活があるのだが、君達には相対的にそれが見えていない。そればかりではなく、イルカは君達よりもずっと、自分達以外の種の生物のことを認識しているのだ。
(11 時 24 分に 1 分間の休止。その後、ゆっくりとしたペースで)
イルカ達には個人的な強い忠誠心や密接な家族パターンがある。また、彼等は高度に発達した「個」と「集団」の認識力や行動性も兼ね備えている。言葉を換えれば、イルカ達は互いに協力し合うということだ。彼等が他の種(の生物)をあえて助けることはあるが(僕を見つめながら優しい口調で)他の種をペットにすることはない。もっとも、水中に棲む哺乳動物には様々な種類があった。そのうちのいくつかは人間を魚と結び付けたようなものだ。まあ、大体の方向としてはチンパンジーと魚を組み合わせたようなタイプなのだが。それは小柄な生き物で、驚くほどのスピードで動き回り、一度(ひとたび)陸に上がったら、何日も水中に戻ることなしに過ごすことができた。
他の蓋然性においては、水中で暮らす哺乳動物達が支配している(場合もある)。彼等は、ちょうど君達が水中で(魚介類などを)養殖するのと同じように地上で(自分達の糧となるものを)養殖している。また、水面下の領域を操作する方法を君達が今やっと学び始めているのと同様に、彼等は今やっと、時間的な制約を受けることなく地上の世界に働きかける方法を学んでいるところだ。
こうなると物理的な宇宙は様々な蓋然性の発端として機能していることになる。可能な限りのあらゆる種が、その体系の中で自分達にとって最大限の達成を見い出すのだ。その種の一つ一つが独自の現実界、独自の「時間」に対して神経レベルで調節(チューニング)されている。つまり、肉体自身は、今あるがままの状態で、生物学的な意味では君達が認識することなどないように見える、他の神経反応(の能力)を先天的に備えているということだ。しかしながら、こうした神経レベルの認識は、他でもない、君達の意識、君達の観念が統率する。この意味で、生まれた時の君達、秩序立った学習プロセスが始まるまでの君達は(今よりも)はるかに自由だ。
君達は、この、生まれた時点では「昨日」へも明日へも歩いていける ── もっとも、歩ければの話だが ──。そして、実際、君達は時間の流れに沿った出来事、流れの外にある出来事の両方を知覚するのだ。